金木犀の季節によせて・・・

私は最初にヤマハの音楽教室にいってたのですが、その先生が寿退社をされ

先生のご自宅に個人レッスンを受けに行くことになったんです。

バスを二つ乗り継いで、降りてからも1キロくらい歩かなければならない場所にありました。

小さな私は母に手をひかれ、暑い日も寒い日も通ったわけですが、

歩く一キロの道のりには、季節の花が咲き、母と子の貴重な時間だったのを覚えています。

唯一嫌だったのは、厳しい先生で、今日は何で怒られるんだろうと、ドキドキしながら通いましたが、母は家で商売をしていたのでそこから逃げる唯一の時間だったそうです。

 

レッスンバッグを持って、母と手をつないで歩く道のりに金木犀の花が咲いていました。

母はこんな私の母なので、「信ちゃん、これね、金木犀っていうんよ

ええ匂いがするけぇこうして匂ってみんさい」

と、よその垣根の金木犀の花をちぎってその花を鼻の中に入れておもいっきり吸っていました(笑)

その光景が未だに忘れられません。(^_^;)

3年生くらいになってからは自分でバスに乗って通ったのですが、何も全く覚えておりません。

一人で行く道のりというのは何の思い出も出来ないんですね・・・

 

それから、40年・・・・

昨日も母の腰の病院へ連れて行きました。

距離的には近いのだけど、いいバスが無いのと、歩く事にすっかり自信を失くした母を

車に乗せて、手をひいて朝早くに着きます。

車のドアをあけたら

どこからか金木犀の香りがしてきました。

母と一緒に匂った金木犀・・・40年の年月を感じました。

手をひいてくれた母が引かれる側になりました。

母は仕事をする私が心配で、体を壊すから、もう仕事はするなと言います。

もっと楽になりなさい。と・・・病気をするから・・・とばかり言います。

借金あるしね・・というと、お母ちゃんが払ってあげるからと言います。

もちろん母が簡単に払えるような額では無いのですが、気持ちはね・・あるんですね。

 

ムジカノーヴァという私たちピアノレスナーの専門書があります。

クラシック色の強いその本から、原稿の依頼があり、書かせていただきました。

来月出版されるのに、写真付きで載るようです。

その事も、そして10月は、京都の宇治(3日)梅田のカワイ(28)でそれぞれセミナーをさせていただくことも

母には内緒です(^_^;)

 

お母ちゃん、金木犀のあの道のりを通わせてくれてありがとう。

ただ単に、欲も無く、私が音楽が好きだからという理由だけで通ったあの金木犀の道の先に今の私があります。

おしゃれもせず、節約しながらでもピアノも電子オルガンも買ってくれた母、あの頃のお月謝は高かったしね・・・よく出してくれたと思います。

 

金木犀の香りがすると母への感謝の思いが募る、そんな初秋です。

 

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